父のこと #4クリームソーダ
思い出されるエピソードには、どんな意味があるんだろうか
なぜ、それを思い出されたのかはわからないが
なぜか、でてきた記憶。
私が小学4年生くらいの頃の話。
だんだんと父親への不信感が芽生えてきていた頃。
淡路島の親戚の家からの帰り、どこかのレストランで食事をした。
外食をしない家だったので、あまり外で食べ慣れていなかった。
外食に慣れていない親に対して、子ども心に若干の不安もあった。
和風のレストランへ入り、母親と私と弟と妹は、「○○膳」みたいなのを頼んだ。
父は食べたくないと言って、クリームソーダを一人で頼んだ。
ウェイトレスの女の人も、妹の前へクリームソーダを出そうとした。
普通はそうだ。
子どもながらに、恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
父は、周りの空気を読まずに、ひとりでしかもクリームソーダを飲んでいる。
「みんなに合わせて同じものを頼んでおけばいいのに・・・」
私と母の冷たい視線をよそに
一人でのんきにクリームソーダを飲んでいる父は
「なにか悪い?」
という顔をしていた。
昭和の時代の父親は威厳のあるものだった。
そういうものを、私も母も望んでいたのだろう。
父のやりたいことをやっていたということだったんだ。
でも、この時期からしばらくは
それは思春期の私には伝わらなかった。
今思えば、自由な家庭だった。
私の自由な発想の保障は家族内でされていたが
その分、母は体裁を整えるために、それを防ごうと必死だったのだ。