本のご紹介「テスカトリポカ」佐藤 究

人を殺すことに対しての感覚が、一冊の作品を読んでいる間にこれほど変わるとは思わなかった。残虐な殺しの場面を読み進めていくうちに、アステカの神話が私の中にどんどんと入り、いけにえのための人殺しを残虐だと、感じない自分がいた。人殺しを怖いとか、恐ろしいと感じるのは、その背景やその犯人の思考が恐ろしいのかも知れないと感じた。主人公の純粋な気持ちがあったからこそ、怖いものとは感じなかったのだと思った。

著者について

●佐藤 究:1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。’16年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。’18年、受賞第一作の『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞および第39回吉川英治文学新人賞のダブル受賞を果たす。