心理師 juneberry’s blog

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「ソロモンの偽証」第Ⅰ部 事件上巻・下巻 第Ⅱ部 決意 上巻・下巻 第Ⅲ部 法廷 上巻・下巻 宮部みゆき

とっても読みごたえのある作品だった。

次を読みたくなる気持ちが、どんどん加速していった。6冊もあるのにあっという間だった。面白かった。

第Ⅰ部 事件 上巻・下巻 感想

同級生の転落死から中学生の生活に少しずつ変化が出てくる。思春期の多感な時期の生徒たちが、友人の死に疑惑を持ちつつ、全体像はまだまだ見えず、少しずつ何かに巻き込まれていくドキドキ感があった。まだ内容を理解している段階で上巻が終わった。

次々と事件が起きるが、まだ点と点でわからない段階。そして、自分たちが知りたいことがわからないまま、大人たちが隠してしまう。多感な時期の中学生たちが、悶々とした気持ちを自分たちでどうにかしたいと考え始める。大人たちが最善と思って選択していることが、この年代の子どもたちにとっては、そうでないこともあると感じた。だから一般的に思春期は難しいのかも知れない。

中学生の頃、自分は大人に近づいていると思っていたけれど、純粋な心と正義感がみんなにあったように思い出した。

第Ⅰ部 事件 上巻 内容(「BOOK」データベースより)

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。

第Ⅰ部 事件 下巻 内容(「BOOK」データベースより)

もう一度、事件を調べてください。柏木君を突き落としたのは―。告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。そして、同級生がまた一人、命を落とす。拡大する事件を前に、為す術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、真実を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。

第Ⅱ部 決意 上巻・下巻 感想

翻弄されていた自分の学校の問題に聡明な中学生たちが立ち向かおうとし始め、1部では学校で大人たちが主体だったが、2部は生徒たちが主体となって今まで起こった事象に正面から向かっていく。

学校は、その立場で考えながら動いていたけれど、置き去りになっていた生徒たちだったが、腑に落ちる答えが欲しいと思う気持ちは新鮮で生徒らしい。たくさんの人を巻き込みながら、自分たちで逃げ隠れできない状況を作り、ものごとへ向かう姿に、大人にはない中学生パワーを感じた。

中学生たちが学校裁判のために人から話を聞く中で、いろいろな人間関係や、そこでの違和感を知っていく。中学生にできる事は限られているようだが、大人の方が今の生活を当たり前だと思っていても、そこから踏み出さないことが多いなと感じた。

そして、真実のために思いがけず検事役を引き受け、その検事役自体は半信半疑でやっていた登場人物だったが、次第に周りの人へ、意気込みは伝播していく。核となる人がいれば、周りの人は、人によって変わっていくように感じた。渦ができた。

考えが違っていても、子どもの思いを聞き遂げ、応援できる親っていいなと思った。だから子どもも頑張れる…。

第Ⅱ部 決意 上巻 内容(「BOOK」データベースより)

二人の同級生の死。マスコミによる偏向報道。当事者の生徒達を差し置いて、ただ事態の収束だけを目指す大人。結局、クラスメイトはなぜ死んだのか。なにもわからないままでは、あたし達は前に進めない。だったら、自分達で真相をつかもう―。そんな藤野涼子の思いが、周囲に仲間を生み出し、中学三年有志による「学校内裁判」開廷が決まる。求めるはただ一つ、柏木卓也の死の真実。

第Ⅱ部 決意 下巻 内容(「BOOK」データベースより)

いよいよ動き出した「学校内裁判」。検事となった藤野涼子は、大出俊次の“殺人”を立証するため、関係者への聴取に奔走する。一方、弁護を担当する他校生、神原和彦は鮮やかな手腕で証言、証拠を集め、“無罪”獲得に向けた布石を着々と打っていく。次第に明らかになる柏木卓也の素顔。繰り広げられる検事と弁護人の熱戦。そして、告発状を書いた少女が遂に…。夏。開廷の日は近い。

第Ⅲ部 法廷 上巻・下巻 感想

学校裁判では、中学生ながら白熱したやりとりが行われた。弁護側、検事側双方とも、聡明な中学生ならではの視点から真実が解明されていく。展開の中に少しずつ違和感を感じる場面もあり、真相にはまだ遠い感じを受けた。ストーリーの進展とともに実際の真相はどうなのかを、並行して読み進め、ほんとに面白い。

中学3年生から見た大人はどう見えているのか…。

大人に正義を求めている生徒たちの思いや、大人のように振る舞おうとする姿。私たち大人から見れば、仕方がないと感じるところで、あきらめないところにパワーを感じた。

何となくわかってきていた結末ではあった。転落死した生徒の兄が感じていた感覚を、すっかり忘れていたことに自分自身で驚いた。何もわからない初めに答えをもらっていたのに、学校のことばかりに目が行ってしまっていたという感じ。

次から次へと色々なことが起こり、それに翻弄されながら過ごしていたけれど、法廷をとおして中学生たちが自分たち自身のこととして捉えられていた。

思春期とひと言でまとめるのも少し軽々しいようだが、大人になる前の子どもではない時期の中学生って、秘めているものが大きいと感じた。

中学生が中心となっているので、大人が主人公の作品よりも新鮮な感覚を持って読むことができました。自分がいつの間にか大人になっていて、ことを荒立てないように…という思いを持っていることにも気づいた。

子どもたちの個性はそれぞれだけれど、無意識で人を傷つけていることがあり、また、大人は無意識でことを荒立てないようにしていることもあると感じた。

大人がしっかりと向き合ってあげないと、いろいろな狭間にいる子どもたちの思いは、自分の中で、寂しく静かに押し殺すしかないのではないか、と感じた。

とても長く読み応えがあったが、あっという間に読み終えてしまった。とても面白かった。

第Ⅲ部 法廷 上巻 内容(「BOOK」データベースより)

空想です―。弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は何もない、と。城東第三中学校は“問題児”というレッテルから空想を作り出し、彼をスケープゴートにしたのだ、と。対する検事・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あの日、クリスマスイヴの夜、屋上で何があったのか。白熱の裁判は、事件の核心に触れる。

第Ⅲ部 法廷 下巻 内容(「BOOK」データベースより)

事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていた―?一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

宮部/みゆき
1960年、東京生れ。’87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。’89年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。’93年『火車』で山本周五郎賞を受賞。’97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。’99年には『理由』で直木賞を受賞。2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、’02年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)